今回は、コンテンポラリージャズ曲でのソロに最適なテナーサックス音源を探ってみます。ビックバンドやスイングジャズの場合とはちょっと趣向が違い、あくまで、楽器1本、ソロの音としての音源の探訪です。4つの音源を聴き比べながら、その音源の特性に迫ります。
この記事では、あくまで「ソロ用」としてのオススメ度をレビューしているので注意してね!
まずはじめに聴き比べ
以下4つの音源を聴き比べながら、その音源の特徴を掴んでみましょう。
- SWAM Saxophones – Tenor Sax
- Studio Horns – Tenor Sax 1
- Studio Horns – Tenor Sax 2
- Session Horns Pro – Tenor Sax
ということで、まずは、私が所有しているサックス音源について、同じMIDIデータで聴き比べができるように、同じ曲で4パターンの音声データを用意しました。
とりあえず、お値段や細かい比較は置いておいて、まずは、とにかく聴き比べてみましょう。
同じMIDIデータで聴き比べ4種
音を聴き比べてみて、どうでしたか?
お好きな音、ありましたか?
ちなみに、midiデータはこんな感じです。
さて、先に私の結論
個人的サックス音源選びのポイント
わたしが、ジャズのサックス音源選びでまず重視するのは、以下のポイント。
- ロングトーンでも音がしょぼくないこと
- ロングトーンに抑揚が付けられること
実際のサックスもそうなのですが、ロングトーンを安定して出せるか、たったひとつの音を伸ばしているだけでも感情を表現できるか、が、サックスのサックスらしいところなのです。
そのサックスらしさを、可能な限り再現できることが、ソロのサックス音源としては、重視するポイント。
サックスはフロントで一番目立つし、メインで聞かれる楽器ですしね。
フロント楽器の音がいまいちで、聴いている人に飽きられてしまっては、悲しいことこの上なし、です。
その点で、最も音がいいなぁと思うのが、この Audio Modeling の SWAM Saxophones でした。
いろいろ探して、比較してみて
わたしも、昔から、いろいろな音源を探してみてはいますが、サックス系は、ピアノなどに比べて、それほど種類がないのが現実です。
ビッグバンドやホーンセクションの音源は結構多いのですが、楽器単品、ソロのために鳴らすという目的で使える音源は、実はなかなか数が少ないのが事実。
ということで、わたしがいろいろと試した結果、現時点でのテナーサックス音源の特徴比較を紹介します。
同時に、私の所有している他の音源とこんな所が違うんだよ、だからオススメだよ。という内容を書いています。
それでは、各音源について、見てゆきましょう。
リアルさと表現力はピカイチ SWAM Saxophones
価格:€ 250 / $ 250
ソロにオススメ度: ★★★★☆
この音源の魅力はなんといっても、表現力の幅広さ。サックスはジャズの花形ですからね。フロントで一番目立つし、サックスの音に表現力があるとないのでは、ジャズらしさが違います。
確かにお値段は張ります。なので「まずは、安くてとっつきやすいのを買おう」というのも否定はしませんが、私の経験上、最初からいいものを買ったほうが結局は良いことのほうが多いです。
操作や慣れに費やす時間や、「やべぇ、これ楽しい」というモチベーションアップ効果を考えると、最初から欲しいものに手を出すのも悪くないと思うのです。
Logic Pro X 標準搭載音源として Studio Horns は、それなりに優秀
価格:¥0 (Logic Pro X に標準搭載)
ソロにオススメ度: ★★☆☆☆
この音源の魅力は、Logix Pro X に標準でついてくるということ。DAWを購入したら追加費用無しでダウンロードして使えます。以前の標準のサックス音源はもっと薄っぺらい音でしたが、抑揚(アーティキュレーション)を、キースイッチで切り替えできるようになって、より表現力が増しました。(ただし、SWAMには到底かないませんが。)
標準搭載されている音源で、同じテナーサックスでも、2種類の音が入っているなんて、なかなか贅沢ではないでしょうか。
ですが、ソロとして使うにはちょっと役不足な感じが否めないです。もしかしたら、もう少し作り込んだら、あるいは、曲調によっては、化けるのかも知れません。ただ、「Horns」という音源の中のテナーサックスですので、ソロ用というよりは、ホーンセクションの中でキレイにバランスよく鳴るように作られているようにも思えます。そのあたり、どうなのか、時間があるときにこの音源の限界に調整して、作り込んでみたい。
個人的に気になったのはベロシティに対して結構センシティブな点。少しベロシティ値を上げ下げしただけで、アタックが増えたり、弱まったりというのが如実に表に出るように感じました。
一方でエクスプレッションに対してはあまり追従してくれない感じなので、ベロシティやエクスプレッションを使ってダイナミックにコントロールするための音源ではないようです。
むしろ、打ち込みとキースイッチの組合せでも比較的、リアルな音が鳴りやすい、というところに、この音源の価値があるのかも知れません。
なお、ベロシティに敏感で、エクスプレッションに鈍感、という、この感覚を感じたのは、私がSWAMに慣れているせいかも知れません。SWAMでは、ブレスによるコントロールが主なので、ベロシティよりも、ブレスのパラメータの方が、より強く影響されているからと考えられそうです。
ホーンセクションとしての Session Horns Proは とってもイイ。ソロとして使うにはクセあり
価格:¥37,800
ソロにオススメ度: ★★☆☆☆
この音源の一番の魅力は、さくっと厚みのあるリッチなホーンセクションが鳴らせるという点。
またホーンの組み合わせプリセットもかなりの数があるので、曲に合うプリセットを選ぶだけで、比較的簡単にホーンの音を曲になじませることができます。
また音源自体の定価は SWAM Saxophonesより高かったりするんですが、トランペットを始め10種類の楽器が含まれていますので、1音色あたりに平均するとSWAMより安くなる計算。(Trumpet1/Trumpet2/Mute Trumpet/Flugelhorn/Alto Sax/Tenor Sax/Baritone Sax/Tenor Trombone/Bass Trombone/Tuba)
ちなみにSession Horns Pro内蔵音源を、ソロで使いたいときは、ソロ音源だけを個別に読み込むことができますので、その方法をオススメします。ただ個人的にはそんな使い方はほとんどしないかな…(下図はソロで読み込んだときの画面)
ちなみに、ホーンセクションとしてすべての楽器を読み込むと、動作がとても重くなります。なので、いくつかのホーンのみ必要な場合は、それ以外の不要な音源は読み込まないように、ソロでの読み込みをおすすめします。
この音源の名前が「Session Horns Pro」というだけあって、ホーンセクションを鳴らすのが得意ですから、逆に言うと、ホーンセクションやビックバンド系でない、ソロ楽器として使うにはちょっと不向きに思えます。
例えば、レガートがうまくいかないので、何も考えずにフレーズを作ると、毎回タンギングした様な音になってしまいます。トリルしたときや、装飾音符にに対しても、しっかりタンギング(舌でトゥと鳴らす奏法)にされてしまいます。
そのため、タンギングせずにフーっと息が流れるような、あまりフレーズを切りたくない音を出すのは、少し苦手な印象です。
SWAM Saxophones と比べるのは酷かもしれませんが、EWIで吹いたときに、出したい音のイメージに追随してこれないのは、ソロ楽器としてはちょっとマイナス点。
また、発音後のエクスプレッションでのクレッシェンドやデクレシェンドと、ベロシティのバランスを取るのは、Logicのサックス音源に似ていて、どちらかというとベロシティが優勢なイメージ。なお、エクスプレッションで抑揚つけたい場合には、「DYNAMIC CONTROL」を Velocityではなく、midi CC11(エクスプレッション)に設定するのを忘れずに。これを切り替えておかないと、どんなにエクスプレッションを書き込んでも反映されません。
まとめ
今回、自分の持っているサックス音源を比較しながら使い勝手を書いてみましたが、世の中にはもっといろいろな音源もあるので、この4つだけがすべてではないのも事実。ただ、私も8年くらいテナーサックス音源探しの旅を続けていますが、SWAM以上のものには出会えていない。また、他の方の記事やウェブページを拝見する限りでは、やはりSWAM Saxophonesが頭一つ抜きん出ている印象です。他の会社からサックス系の音源が新しく出ているようなことも、最近はあまり聞かなくなりましたしね。
Sample Modelingから、Audio Modelingに変わって、最初はどうなることかと心配していましたが、最近はウェブサイトも充実してきて、格好良くなってきて、Swam-W Engineには、これからに期待大です。
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