こんにちは、フリー作曲家のこよたかです。
今回は、ジャズ曲の作曲に便利なアプリ「iReal Pro」のご紹介。
「iReal Pro」はジャズを練習する人用のアプリですが、いやいや、ジャズ曲を作る人にも、と〜っても便利なアプリです。
この記事では、このアプリのどんな点が優れているのか、「ジャズ曲を作る立場」として、おすすめポイントと注意点を解説していきたいと思います。
なお、アプリ本来の「アドリブ練習用」の使い方は、この記事では触れません。あしからず。
では、さっそく見てゆきましょう。
ジャズ作曲における iReal Pro おすすめポイント
まずは公式の解説動画(英語)をどうぞ。
ざっと動画の内容を見ていただきながら、ひとつひとつポイントを挙げてゆきます。
コード譜から27種類のジャズ伴奏スタイルで自動演奏してくれるのでアレンジ検討の幅が広がる
ジャズのパターンだけで27種類。
加えて、ラテンが8種類、その他ポップス系が12種類。
合計47種類の伴奏が自動演奏されちゃいます。
つまり、作曲してコードを思いついたら、
- そのコードを入力し
- アレンジパターン選んで
- プレイボタン押す
- 音を確認
- はい、おしまい
納得できれば、これでアレンジの方向性は決まり。
この手軽さのおかげで、アレンジ変更のハードルが下がり、色々試せて便利です。
例えば、「4ビートで作ってみたけど、やっぱりボサノバにしたいな」、なんて思った時、通常 DAW で作りこんでいる際には、各パートを最初から録音し直す必要が発生します。
「iReal Pro」を使うと、設定ひとつで変更、試し聞きができちゃいます。
便利だ〜。
移調したとき、コード譜を書き直す手間を省いてくれる
例えば、曲を作ってはみたものの「いやいや、ボーカルそんな高音でないから…!」って時も、設定1つでサクッと移調すれば解決!
そして、手書きのコード譜を書きなおす必要がなくなるのが、個人的にはとても嬉しい。
むしろ、ジャズは移調が当たり前ですからね。
とはいえ、実際は調が変わると雰囲気もかなり変わっちゃうので、作曲者の立場としたら、できれば最初のうちから、声域や楽器の音域と調は想定しておきましょうね。
ん? あなたの持ってる DAW でもコードの移調はできるって?
確かに、コード表示は、一般的なDAWでもできます。
ですが、一般的なDAW(例えば私の使うLogic Pro X)だと、高機能な故に、コードの入力行為そのものが面倒だったりしませんか?
また、コードの分析機能や、トランスポーズ機能はだいたい搭載されてますが、新規ファイル作成時に曲のキー(調号)を正しく設定しておかなかったために、後から編集すると訳が分からなくなったり…(筆者経験済み。私の使い方が悪かったのかもしれないけど…)。
それに比べると、iReal Pro は、コードに対して音を鳴らすだけなので、とてもシンプルで扱いやすいインターフェイスになっていると思います。
余計なこと考えずに、コードだけしっかり把握して作曲したい人には、とっても便利だと思いますよ。
MIDIデータにエクスポートできる
アプリによくあるのが、アプリ内完結で、そのアプリでしか使えない。というデータ。
ですが、iReal Pro は違います。
できたコード譜および伴奏データは、以下に出力可能。
- iReal Pro 専用ファイル(拡張子はhtml, 中身はXMLっぽい?)
- WAV
- AAC
- MIDI
- Music XML
- 画像データ
相手が iReal Pro を持っていれば、専用ファイルデータ(html)をメール添付すれば、すぐに共有可能。
WAV,AACエクスポートは、音声データが欲しい人向けのデモ用マイナスワンの下地に。
MIDI出力は、DAWで取り込んで、鳴っている和音の構成音を、自身で確認したいとき。
あるいはDAWからスコアとして出力したいときに。
画像データ、PDFは印刷して使うときに。
うーん、便利な世の中になったもんだ。
なお、ひとりで作曲してる場合は、MIDI出力できるだけで十分な気もします。
(私は MIDI エクスポートで十分です。え、…いや、ぼっちじゃないよ!)
複数デバイスで利用できるのでメンバー間の共有が楽チン
OSX, iOS, Android で利用できます。
このおかげで、iReal Pro の便利さが更に引き立っているように感じます。
前述のエクスポート機能とも絡みますが、流れとしては、こんな使い方ができそうです。
- 作曲する
- デスクトップ(MacOSX)でコード譜をキーボードからダダダッと打ち込む
- 移動中にスマホ(iPhone)で聞きながらコード譜の推敲(リハーモナイズ)
- 各楽器担当(複数人)へ、コード譜をシェアして各自で音の確認(iPhone,Android等で)
- 各楽器担当で不要なパートを各々ミュートして、マイナスワン作って練習
- 別途、録音
- 調整、ミキシング…etc(以下略)
私の所属してる Prictnium で、活躍しそうだわ。
メンバーみんなにこのアプリを買ってもらわなきゃだけど。
ジャズ作曲における iReal Pro の注意点
メロディは入れられません
説明不要。上記のとおりです。
別途 DAW などで作成しましょう。
また、コード進行を聴いてメロディが浮かぶタイプの人にとっては、とっても役に立つアプリかもしれません。
ですが、メロディからコードを付ける人には向いてないかも。
メロディーから作ったコードを、サクッと鳴らして確認するにはOK。
作曲(コード譜を考える)行為は自分でやらなきゃダメ
再度の確認っぽい内容ですが、このアプリ、自動作曲機能、ではないです。
自動演奏機能、と言った方がいいでしょうね。
ささっと音の鳴り方を確認することができるのが最大の利点です。
「ねぇねぇ。ちょっとカッコよさげなコード進行できたんだけど、弾いてみてくれない?」
という無茶ぶりにも即座に対応できる、ハイレベルなバンドメンバーに語りかける感じで。
ですんで、作曲(コード進行を作る)作業は自力でやりましょう。
なお、コード譜でイントロ部分を書けば、鳴らしてくれますが、イントロを自動でつけてくれるわけではありません。
ただし、なぜか、ごくごく簡単なエンディングは付きます。
エクスポートしたMIDIデータそのままはちょっと味気ない
出力したMIDIデータには、一応、ベロシティも強弱がちゃんとついていますが、そのまんま鳴らすにはちょっとショボイ。
その辺は、後からデータを加工するなり、自分の演奏で録音し直すなりは、必須ですね。
ジャズアレンジ以外は別途DAWでやりましょう
個人的にはジャズ以外の曲ってそれほど多く作らないので、それほどな減点ポイントにはなりませんが、ポップス向きではなさそうです。
そもそもこのアプリにジャズ以外のアレンジを求めるのが間違いといえば間違い。
伴奏のバリエーションも、その他ポップス系が12種類のみですので、ロック、ポップス、演歌などなど、いろいろなアレンジパターンをご所望の方は、別の 某DAW を利用した方がいいでしょう。
こればっかり使っていると作る曲が単調に、そして腕が落ちそう
自戒の意味も込めて、機械に頼り過ぎはいけません。
便利なものに頼りすぎると、いつも同じようなアレンジになってしまいそう。
そして自身のアレンジ能力が退化しそうな気もします。
あくまで、作曲とアレンジの初期段階において、その方向性の検証・確認や、デモ音源用の制作の時間を短縮するため。
と、目的を持って利用したいものですね。
まとめ
このアプリがあれば、メロディー作曲を除いた伴奏部分について、デモ音源作成からコード譜面作成、そしてバンド練習用マイナスワン作成まで、このアプリだけでほぼ完結でき、他者とのデータ共有にもとても便利と思います。
ただし、最終の完成版音源の作成までは、このアプリのみではちょっと不足。
ですが、「下書き」レベルの完成度までもってゆくのに、作業の手間を、か〜な〜り、大きく省いてくれます。
なんでいままでこれ知らなかったんだろう。
有料ですが、その価値は十分にあるでしょう。
あまりに便利すぎるので、OSX, iOS 版と、私は勢いで両方買ってしまいましたよ。
というわけで、最後におさらい。
以上、「iReal Pro」を作曲作業に使うときのポイントをご紹介しました。
余談:Prictnium のメンバーみんなに買ってもらって、実際に運用してく中で、さらに使い勝手を検証してみようかしら。
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